「愛する」と聞いて、みなさんはどういう関係性、愛の形を思い浮かべますか?
一口に「愛する」と言っても、親子、友情、恋人や夫婦間での愛情、自己愛、自然や動物を愛しむ心など様々です。
そして愛の形も、無償の愛、見返りを求める愛など色々。また、その表現方法にも個性があります。
みなさんも、自分にとって慣れ親しんだ心地よい愛し方をきっとお持ちだと思います。
或いは、理想の愛し方、愛され方をお持ちかもしれませんね。
人は、これまでに慣れ親しんだ愛し方、愛され方ができなくなった時、とても大きな喪失感を味わいます。
特に大きな喪失感とは、例えば、
- 大切なお子さんが、進学や就職、結婚などで遠く離れてしまった時
- 大切な人が亡くなってしまった時
これらの場合、これまでの愛し方ができなくなることに、物理的・心理的距離も加わり、
あたかも「愛することがもうできなくなった」と感じてしまう訳です。
愛しいという気持ちだけが行き場なく、ぽつんと一人ぼっちで取り残されたように感じてしまいます。
愛する人が巣立っても、亡くなっても、愛する気持ちはこれからも変わらずに持ち続けても大丈夫。
必要な事があるとすれば、そこに一工夫を加えてみることです。
喪失感でこころが一杯になった時は、こころのフォーカスを「愛され方」ではなく、「愛し方」に移行してみてください。
そして、これまでとは違う「愛し方」を模索し、少しづつ試してみましょう。
(その際、決してひとりよがりの自分本位な愛し方にはならないことが大切です。)
新たな愛し方が見つかれば、愛する気持ちにも、心地良い新たな居場所を見つけてあげられるはずです。
簡単な作業ではないけれど、これは、子離れやグリーフワーク(喪の作業)と呼ばれる過程で、とても重要な意味を持ちます。
「愛するということ」というのは、エーリッヒ・フロムの有名な著作のタイトルでもあります。
すでに、古典とも言えるこの本ですが、愛するということの本質を考える上で、現代を生きる私達に、
今も尚、とても大切なメッセージを届けてくれます。
この本のオリジナルタイトルは「Die Kunst des Liebens」。
直訳するなれば、「 愛という芸術」といったところでしょうか。
私達は、愛するという能力は、あたかも生まれた時から私達に備わっており、いつでも行うことができると考えがちですが、
実は、愛するという能力は、意識的に努力して身に着けていくものなのです。
芸術家達が、日々鍛錬を行い、スキルを磨き、理想とする形へ、本質へと絶え間ない努力を続けるように。
時には、完成したかのように見える作品でも、真摯に向き合い、それをまた一から作り直すこともあるように。
一見変わりのない日々の生活でも、大切な人や物との関わり合いの中で、愛の形は常に変化しています。
あなたの愛が美しいハーモニーを奏でますように。素敵な絵画を描きますように。
誰かを愛おしく想う気持ちを大切にしてくださいね。
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